不整脈源性右室心筋症(ARVC/D)

2016年11月09日

若年者の突然死の原因ともなる不整脈源性右室心筋症(ARVC/D)という心臓病があります。ARVC/Dは、心筋が脂肪組織に置換されることで、心拡大や心機能低下を引き起こし、心室頻拍や心室細動などの致死的不整脈や心不全が問題となる稀な心筋症です。また病変が右心室から起きることが多く、疾患の名前の由来となっています。緩徐に進行していくことからその診断や予後予測は困難とされています。

今回、東京女子医科大学病院心臓病センターでの多くのARVC/D症例の経験から、われわれはその患者背景や長期予後を調査し、アメリカの心臓病学会誌であるJACC clinical electrophysiologyに掲載されましたのでその報告を行います。

90人のARVC/D患者を平均10年の長期予後を検討し、47人(52%)に心室頻拍などの致死性不整脈を認め、28人(31%)が心不全入院、そして19人(21%)で心血管死を認めました。 

ARVC/Dの診断は、2010年にMarcusらより提唱されたModified Task Force Criteriaで行います。この診断基準は、①右室の構造的・機能異常 ②心筋の病理所見(脂肪化、線維化) ③心電図での脱分極異常 ④心電図での再分極異常 ⑤心室性不整脈 ⑥家族歴の項目からなり、それぞれにMajor項目とMinor項目があります。これらの項目は心室性不整脈、突然死や心不全のリスク因子でもあり、この診断基準が診断だけではなく、予後予測にも使用できないかと考え、検討しました。

ARVC/Dの診断基準をより多く満たした群(ARVC/Dスコアが高い群)では、イベント発生率が高いことがわかりました。今回の長期にわたる観察研究からARVC/Dの診断基準は、ARVC/Dの診断だけでなく心血管イベント発生の予後予測としても有用で、臨床的意義をもつと考えました。

不整脈源性右室心筋症は長期にわたり緩徐に進行していく疾患です。若年者で突然死が最初の症状になることもあります。末期には重症心不全で移植医療を考えなければならない方もいます。診断時に予後予測を行うことができるようになることで、リスクの層別化をすることができ、疾患のマネージメントに役立つと考えます。



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参考文献

  • Basso C, et al. Lancet. 2009;373: 1289-1300
  • Marcu Fl, et al. Circulation. 2010;121: 1533-41
  • Kikuchi N, Yumino D, et al. JACC CE. 2016;2(1):107-115


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