致死性不整脈へのAEDと心肺蘇生法

2017年01月16日

院外心停止患者の生存率向上には、致死性不整脈への早い除細動が必要と言われています。病院外での除細動を少しでも早く行うために、日本では、学校や職場、駅、ショッピングセンターといった公共の場でのAEDの設置が広く普及してきています。AEDとは、automated external defibrillator の略で、自動体外式除細動器のことです。このAEDにより、神経学的予後の良い心肺停止蘇生患者が増えているという研究が、最近New England Journal of Medicineに発表されたので、報告します。

2005年から2013年までの間に、院外で市民により目撃された心原性心室細動による心停止患者で蘇生が行われた患者を、前向きに研究したものです。43762人の目撃された心原性心室細動による心停止のうち、4499人(10.3%)が市民によるAED除細動を受けています。そして、その割合は、2005年に1.1%だったものが、2013年には16.5%と増加しております。また市民によるAED除細動を受けた場合、1ヶ月後の神経学的転帰は有意に良い結果でした。市民による除細動により良い転帰の患者数は2005年に6人だったものが2013年には201人と有意に増えていました。これは、日本において、市民によるAED除細動の増加は、心室細動による院外心停止患者の転帰改善と関連しているという結果と考えられます。

このように、院外での心停止患者への早期の除細動は、非常に重要です。では、実際に、目の前で誰かが倒れていた場合、どうしますか? 

<心肺蘇生法手順>

1. 肩をたたきながら声をかける

2. 反応がない、または判断に迷うときは大声で助けを求め、119番通報とAED搬送を依頼する

3. 呼吸を確認する

4. 普段通りの呼吸がない、または判断に迷う場合は、すぐに胸骨圧迫を30回行う

5. 胸骨圧迫の後、人工呼吸を2回行う。(胸骨圧迫30回と人工呼吸2回のペース(胸骨圧迫のテンポは100−120回/分)

6. AEDが到着したら電源をいれる

7. 電極パッドを胸に貼る

8. 電気ショックの必要性は、AEDが判断する

9. ショックボタンを押す

AHA(アメリカ心臓協会)では心肺蘇生のガイドラインを定期的に更新して発表していますので、以下に2010年から2015年版への主な変更点をまとめます。

  • 呼吸→循環の順番での確認ではなく、呼吸と循環の同時確認
  • 胸骨圧迫のテンポ: 100回/分 以上 → 100〜120回/分
  • 胸骨圧迫の深さ: 5cm以上 → 5−6cm
  • 胸骨圧迫:押したら完全にもどす → 押したら完全に戻るようにする。胸部にもたれないように行う。
  • 胸骨圧迫の中断:胸骨圧迫の時間は60%以上として、中断時間を最小限にする(10秒以上の中断はしない)

当院では、地域の方々が安心して過ごしていただくため、AEDをクリニック内および往診車にも常備しています。

AED.png

参考文献

  • Kitamura T, et al. N Engl J Med. 2016; 375:1649-1659.

  • 東京消防庁HP"倒れている人を見たら心肺蘇生の手順"


院長コラムTOP

年別

カテゴリー別

03-5956-8010

<受付時間>9:00~18:00

フォームからのお問い合わせはこちら