心不全の病期・ステージ分類

2017年07月18日

アメリカ心臓病学会(AHA)において、心不全の病期はステージA、B、C、Dと分類されています。

  • ステージA:高血圧や糖尿病、冠動脈疾患などはあるが心筋や心膜、弁機能といった構造的異常をきたしておらず、症状のない状態。
  • ステージB:左室肥大や心拡大、心機能低下、弁膜症、心筋梗塞の既往などの構造的異常が出現しているが、症状のない状態。
  • ステージC:構造的異常があり、症状の出現がある状態
  • ステージD:構造的異常があり、十分な薬物治療をおこなっても安静時の症状がある状態。

  

心不全ステップ1.png

  

たとえば、息切れなどなんらかの症状をきたし、定期的に病院へ通院している心不全患者さんはステージCにあたります。そして、さらに病状が進行し、頻回の心不全入院が必要な患者、心臓移植待機患者、補助人工心臓を植え込んでいる患者、症状緩和目的に強心薬の投与を行なってる患者さんらはステージDにあたります。ステージDは、末期心不全状態ともいわれており、このステージCからステージDにどれだけの患者さんが移行し、またそれはどのような症例であるかを知ることは重要です。ステージDになると、治療方法がないわけではありません、本邦では65歳以内は心臓移植や植え込み型補助人工心臓の適応となるため、予測しておくことも重要となります。

このような観点から、最近アメリカより、ひとつの研究報告がありましたので、以下にその概要を示します。 

外来管理をされている左室収縮不全(左室駆出率40%以下)のあるステージCの心不全患者が3年間でどの程度ステージDに移行するのか、そして移行のリスク因子は何か、さらには死亡のリスク因子が何かということについて、調査されています。

2012年1月1日から2012年3月31日までの間のエモリー大学の記録で、18歳以上の連続した心不全患者が抽出されています。尚、本研究の対象にて、弁膜症性心不全、また特殊な心筋症(肥大型心筋症、ストレス誘発性心筋症、浸潤性心筋症、拘束型心筋症、化学療法が原因の心筋症)、複雑先天性奇形、右心不全がプライマリーのもの(右室心筋症やclass1肺高血圧症)については除外されています。

最終的に964人が評価対象者となっています。平均62歳、女性35%、白人47%、黒人46%、平均EF 28%、虚血性心疾患47%、NYHA3-4が51%でした。平均観察期間は3年で、この間に112人がステージDに移行、116人が移行前に死亡しています。3年間での移行率は12.2%で年率4.5%でした。 白人より黒人、虚血性心疾患より非虚血性心疾患、NYHA1-2より3−4の患者群で有意に移行率が高くなっています。なお、女性と男性での差はありませんでした。また、死亡と移行の両者を合わせた場合は、25.1%で、年率9.2%でした。 ステージDへの移行の予測因子としては、非白色人種(HR1.68)、NYHA3-4(HR2.9)、非虚血性心疾患(HR1.85)、気管支拡張薬が必要な慢性閉塞性肺疾患(HR2.01)、EF<=20%(HR2.80)、収縮期血圧<110mmHg(HR2.23)、BUN>24mg/dl(HR1.87)、総ビリルビン>0.9mg/dl(HR1.68)という結果でした。 またこれらの結果をもとに著者らは、ステージD移行へのリスクスコアを提唱しており(BOX1)、このスコアにより(FIGURE3)の通り、移行率を予測できます。

今回の研究結果で、左室機能が低下しているステージCの心不全は、3年の間に、8人に1人がステージDに移行、また別の8人に1人が死亡、つまり4人に1人がステージD、または死亡するという転帰をとります。そして、本研究のリスクスコアの結果から(FIGURE3)、ステージCからステージDになる割合は1%から70%まで症例により広い範囲にあることが分かっています。ただし、アメリカと日本で医療事情が異なるので、日本でも同様であるかはわかりません。多くの一般的な心不全患者さんは、このステージCにあり、その治療目標は少しでもその進行を止め、突然死を予防し、安定した生活を過ごしていただくことにあります。 どのような心不全患者さんが悪化していくか予測しておくことは、患者さんにとっても、我々医療者にとっても非常に重要なことであり、本研究は、貴重な報告と考え、取り上げさせていただきました。

BOX1

2017071801.png

FIGURE3

2017071802.png

参考文献

  • l Kalogeropoulos AP et al. JACC Heart Fail. 2017 Jul;5(7):528-537.
  • 心不全 / 心臓疾患 / 高血圧について

  

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