急性・慢性心不全診療ガイドライン:vol.5 診断2

2019年05月31日

今回は、vol.4に引き続き、心不全の診断について、特に心エコーおよび運動耐容能を中心に、心不全診療ガイドラインから抜粋し、述べさせていただきます。

心エコー検査

心不全診療において、心エコーは重要な診断的検査です。前回のvol.4でも示しましたが、心不全診断の確定診断のための検査になっています。心エコーでまずみる指標として、左室駆出率(LVEF)があります。このLVEFは、心不全治療の薬物選択を行う上でも、大切な指標となります。LVEFが低下した心不全をHFrEF、LVEFが保たれている心不全をHFpEFと呼ばれていますが、本邦では、高齢化に伴い、HFpEF患者が増えています。心不全診療ガイドラインでは、HFpEFにおける拡張障害診断として、E/e'e'、三尖弁逆流速度(TRV)、左房容積係数(LAVI)を用いた診断アルゴリズムを取り上げています。またHFrEFにおいては、心エコー図による左房圧上昇の判定として、E/AEE/e'、三尖弁逆流族度(TRV)、左房容積係数(LAVI)の5つを用いたアルゴリズムが取り上げられています。

また心エコー検査を用いた新しい指標として、肺をエコーでみることにより、肺うっ血の程度をみる診断法がガイドラインでも提示されています。仰向けで肋間にプローブをあて、胸膜からのびる彗星の尾のような高輝度のライン(B-line)の数で肺うっ血の程度をみていきます。われわれが行っている在宅医療の現場では、心不全の増悪時のうっ血の評価として、レントゲンの代替法として、このような肺エコーが臨床的に役立つことがあります。

運動耐容能

運動耐容能は心不全患者の活動能力を規定する重要な因子で、心不全患者の重症度やQOLの低下を反映します。 運動耐容能の改善が、予後の改善も期待されることから、心不全治療の主要な介入ポイントの1つでもあります。

  • NYHA心機能分類:日常生活の身体活動能力に基づいた重症度分類で、簡便かつ患者のQOLを反映した評価法です。しかし、定量性・客観性に乏しい点が欠点です。
  • 身体活動能力指数:日常生活の具体的な活動を特定し、その運動量をmetabolic equivalents(METs)に対応させた指標が身体活動能力指数(Specific Activity Scale;SAS)です。この指標は心不全症状が出現する最小運動量を酸素消費により定量的に判定しようとするものです。
  • 6分間歩行試験:6分間歩行試験(six-minute walk test)は、特殊な設備が不要な簡便法として、最大努力による6分間の歩行距離を測定する最大負荷試験です。
  • 心肺運動負荷試験:トレッドミルや自転車エルゴメータを用いた症候限界性多段階漸増負荷法による心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing; CPX)で最高酸素摂取量(peak oxygen uptake; peak V・ O2)が評価でき、最も客観的な運動耐容能指標とされています。

以上となりますが、心不全患者において、心エコー検査や運動耐容能評価は、いつでもどこでも行える重症度評価方法であり、地域医療における心不全のマネージメントするための強い味方になってくれるツールであると考えています。

 

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弓野 大

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