急性・慢性心不全診療ガイドライン:急性心不全の初期対応 vol.7

2019年12月23日

心不全は、ガイドラインのタイトルにもあるように、発症形態により急性と慢性に分かれます。 急性心不全は、急激に肺水腫や失神などを呈し、心肺停止に移行する可能性のある危険な状態です。このため、速やかな初期対応が重要です。しかし、急性心不全の初期判断は、地域の非専門の医師看護師や、病院においても同様かと思います。今回は、急性心不全を取り上げて、説明していきます。

急性心不全の初期対応

本ガイドラインでは、急性心不全に対する初期対応からの急性期対応のフローチャート(図)に準じて、時間軸を考えながら、早期に介入することが重要と強調しています。

  

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こちらを参考にしながら、地域のかかりつけの先生方を想定し、外来診療や在宅診療での急性心不全に対する初期対応のシナリオを考えてみました。

1. ベッドや椅子で安静を確保の上、バイタルサインを評価します。

2. SpO2<90%であればHOT等で酸素投与し、それでも改善ない場合は、CPAPやASVなどの陽圧呼吸療法の追加治療を行います。

3. 起坐呼吸やBendopneaなどの症状、頸動脈怒張や肺雑音、下肢浮腫などの体液貯留に伴う身体所見から心不全と診断を行います(vol.6心不全チェックリスト参照)。

4. 臨床現場即時検査(POCT)による血液検査、12誘導心電図にて、急性冠症候群と肺血栓塞栓症の除外診断も行います。これは、急性心不全の原因、次の治療介入を考えるうえで重要となります。

5. 心不全と診断されれば、硝酸薬スプレーや舌下剤の投与や利尿剤静注を行う。バイタルや症状の変化をみていきます。入院加療が必要と判断されれば、AEDを準備しながら、早急に高度な循環器診療が可能な病院への搬送を検討します。

これらより、時間軸、酸素投与、除外診断、硝酸薬、搬送がキーワードとしてあげられ、随時、病状の変化をみながら、意思決定支援も上手に行い、病診連携を行うことも大切なこととなります。

本ガイドラインに則った急性心不全治療初期対応を実践することで、地域や在宅の現場でも心不全の重症化を減らせるのではないかと考えています。

  

弓野 大


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