一緒に考え、その人らしい暮らしをー作業療法の取り組み
こんにちは。
ゆみのハートクリニック訪問リハビリテーション部 作業療法士の山﨑です。
今回は、私が担当している患者さんとの作業療法の取り組みをご紹介します。
作業療法士(OT:Occupational Therapist)とは、心身に障害のある方が、自分らしい暮らしを実現できるよう「作業=その人にとって意味のある活動」を通して支援をする専門職です。
一人ひとりの希望や状態に合わせて、生活動作の改善や参加 (社会や生活の中での役割を果たすことや自分らしく他者と関わりながら生きること) を目指した関わりを行います。
ご紹介するのは、40代の男性の患者さんです。エプスタイン病と先天性心房中隔欠損症という心臓疾患を抱えており、当クリニックの理学療法士が訪問しています。「箸を使いたい」「文字を書けるようになりたい」という希望から、今年1月に作業療法がスタートしました。
途中、体調不良による入院もありましたが、現在は「ベッドから離れて起きる時間をつくること」と「手のリハビリ」を並行して行っています。最近は気候も穏やかなので、外に出てスケッチをする活動も取り入れています。先日は、お母様とヘルパーさんと一緒に近所の公園へ行きました。
新緑が美しいイチョウの木を丁寧にスケッチされ、20分ほどの時間をしっかり屋外で過ごされました。
室内では、ブロックの握り離しや豆つまみなど、日常生活に直結する動作の練習を実施。訪問のない日も、自主トレーニングメニューと実施表を活用して、ご本人とヘルパーさんで取り組んでいただいています。
最近、印象的だったのは、「もっと楽しくやりたい」というご本人の希望から、一緒に"ゲーム感覚"の課題を考えたことです。ペットボトルに立てた十字の割りばしに、交互に洗濯ばさみを挟んでいくという課題では、集中力や手の巧緻性だけでなく、笑顔や訪問する支援者の方々とのコミュニケーションも自然と生まれました。このように、リハビリの初期には「課題を提示する」ことが中心でしたが、現在は「一緒にやってみる」「工夫しながら続けてみる」かたちで行っています。
本人とともに実験しながら進めていく。それが結果として、ご本人の「やってみよう」という意欲を引き出し、リハビリそのものの意味を豊かにしていくのだと感じています。そしてその過程は、作業療法士である私自身にとっても非常に学びが多く、日々楽しく取り組ませていただいています。
この日は水彩ペンやクレヨンを使って絵を書きました↑
さらに、ご本人からは「同じ病気を持つ人たちに向けて、自分の経験を発信していきたい」との声も聞かれています。今後はSNSなどでの情報発信についても、一緒に取り組みながら支援していく予定です。「一緒につくっていく」ことは、作業療法においてただの手段ではなく、それ自体が意味ある"作業"であり、リハビリの本質でもあるのだと改めて感じています。
訪問リハビリテーション部 作業療法士 山﨑